神の島 琉球RYUKYU

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旧約聖書物語

旧約聖書物語

皆さん!毎日ステイホームで暇だ~なんて言ってる人はいませんか!?

生きててよかったーと思える本に出会えたので、息せき切ってご紹介します。

旧約聖書物語」(犬養道子著・新潮社)。

東野圭吾だの赤川次郎だののはるか上をゆく、もう読みだしたら止まらない話の流れにあなたもグイグイ引っ張りこまれることでしょう。

 

イマイチ感情移入しにくかったいわゆる聖書ですが、犬養道子の二十年にわたる詳細な史実・資料研究により、ここに生き生きとした文体で蘇りました。アブラハム(「人々の父」という意味)から始まり、紀元前の民族が分裂、群雄割拠、裏切り、嫉妬、復讐、戦争、破壊、没落、流浪、帰郷・・・と、めくるめく歴史とともに、まるで自分もそこにいて、同じ砂漠のひりひりする太陽や乾いた風の中を疾走しているような臨場感たっぷり。

 

アブラハムの子孫ヤコブイスラエルの「イスラエル」とは神と取っ組み合う者という意味だそうで、なるほど、昔も今もイスラエルは世界でパレスチナでいつも格闘していますよね。

「我を、我のみを信ぜよ」と偶像崇拝邪教を禁じる神の掟を何度も破り、そのたびに愛の罰を受けるイスラエル。その時々は反省しても、またすぐに我を忘れて同じ過ちを繰り返す。そしてまた罰を受ける。まるで私じゃん?みたいな物語なんですよ!

そもそもこのクソ長い凄まじい試練を自ら呼び込んだのも、自分の力で生きることが面倒臭くなって、リーダーとなる「王」を神にオーダーした人々の(つまり我々の)怠惰な心が生んだもの。

生きることをつい他人任せにして本当の自分(神の分け御霊)を見失う我々自身の話なのですよ。ホント、犬養道子、教会の神父の説教より内容が深くて広くて温かく、聡明です。

 

ベンジャミンは末っ子につけられる名前だとか、ユディット(「ユダの娘」の意)はイスラエルの女傑だとか、マラソンの由来とか、欧米人キリスト教徒が飼い犬にトビやトビアという名前をつけたがる理由など、クリスチャンでなくても西洋社会の理解度アップにも役立つテキストです。

 

因みに犬養道子緒方貞子と親戚関係。

二人ともカトリック教徒ですが、貞子が上智大学→軍事系ジョージタウン大学→インターナショナルヤクザと言われる国連、守銭奴として有名なロックフェラーの出版記念パーティ発起人、とイエズス会回転ドアで昇ったようで堕ちたみたいなのに対し、道子は津田塾大→欧米留学→聖書研究、執筆、犬養道子基金を設立して私財を投じて難民支援活動、と自分の足で地道に歩んでいったのが対照的ですね。

旧約聖書物語

旧約聖書物語