神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

ハニーランド 永遠の谷

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久高島の猫  ハティツェさんも猫と暮らしています


桜坂劇場で「ハニーランド」(監督:リューボ・ステファノフ&タマラ・͡͡コテフスカ)を観てきました。(以下、若干のネタバレがあります)

ギリシャの北に位置する北マケドニアのさびれた山岳村で、年老いた盲目の母親の介護をしながら養蜂業を営むハティツェ。養蜂業といっても切り立った崖をよじ登り、ハチの巣から蜜を集めるという過酷な仕事。蜜の半分は必ずハチのために残し、半分をいただきます。それが昔から自然と共生してきた彼女のやり方。

ある日トレーラーとともに引っ越ししてきたトルコ人一家が隣人となり、ハティツェの静かな生活が一変します。

 

3年と400時間に渡る撮影で綴られる日々は、ドキュメンタリーというより秀逸なドラマのよう。電気も水道もない限界集落に暮らす人々の厳しい生活、貧困、搾取などが問題として浮かびあがってくるものの、ハティツェもトルコ人一家もそれほど悲嘆にくれるようにも見えない。何もかも失っても自暴自棄にもならない。ここがダメなら次の土地へ移動するだけ、流れに任せるだけという現代の遊牧民とでもいうような達観した逞しさを感じるのです。

隣人を受け入れ、ミツバチの全滅を受け入れ、母の死を受け入れ、大して恵まれなかった自分の人生も淡々と受け入れる。そこに取り乱したり、恨んだりする執着はない。今日という日を受け入れ、ただ自然とともに生きていくという態度に、諦観というか悟りというか、崇高な人間の姿を見ました。

 

美しくも厳しい大自然に鍛えられながら生きていたら、毎日が修行ですよね。ハティツェはスコピエという20km離れた都会に蜂蜜を売りにいくのですが、その姿はまるで山から下りてきた修行僧のようでした。いや~凄い人々の存在を垣間見せてくれた映画でした。

 

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  • 発売日: 2019/10/22
  • メディア: DVD