神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

「魂の退社」

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              店番の仕事をしています

 

リモートワーク続きで鬱病が増えているそうですが、コロナ禍の中で、働き方を考え直している方も多いのではないでしょうか。


稲垣えみ子著「魂の退社」を読みました。

大新聞社の論説委員編集委員をつとめエリート人生まっしぐらだった稲垣さんは、50歳の2016年に退社。突然のように受け止められた退社も、彼女の中では10年くらい前から発酵していた考えだそうです。

 

香川県の高松総局デスクに異動になったとき、料理好きな彼女は休日になると各地の農産物の直売所に通うようになりました。直売所は野菜や米や山菜が充実していて、しかも安い。だが、彼女が魅せられたのは安さだけではなく、直売所には「ないもの」がたくさんあることだというのです。

 

都会では旬でなくてもいつでも野菜が一通り揃っていますが、直売所には旬以外のものが「ない」のです。いつでも手に入るものには有難味も感動も感じないけれど、直売所でようやく旬を迎え出回るイキイキした野菜をいただく嬉しさ、有難さ。それこそが贅沢なのだと気が付いたのです。

「ある」ことが当たり前の今、「ない」ことの方が「ある」ことよりむしろ豊かなのだという発想の転換ですね。凄い発見だと思います。

 

また、会社を辞めて初めてわかった理不尽な無職の実態についても書いています。

日本社会とは実は会社社会。会社員にあらずんば人にあらず。無職になると馬鹿高い国民健康保険に入らなければならない。不動産は定期的な収入のある人つまり会社員を保証人に立てないと借りにくい。会社に所属していないと自動的に社会人の枠外に置かれ、不審者扱いされ、信用されず、暮らしを守るセーフティネットからも外れていく。国民年金では安心して老いることも難しい。もはや人権すら保障されない世界なのであると。

 

会社員の方には自分の中の会社依存度を下げることを勧めています。誰でもいつかは会社を去る日が来るわけですから。

会社は修行の場であり、依存の場ではない。人は自然に同期できる相手を探しているが、会社という集団の中にいるとそのセンサーが鈍くなる。だから会社員は人と個人的につながるのが下手。つながるためにはまず集団への依存心に気づき、一人で考え行動する習慣をつけること。一人の人間としてつながる。人を助け、助けられる。そんな関係を意識して作っていくことが大切なようです。

  

魂の退社―会社を辞めるということ。

魂の退社―会社を辞めるということ。