神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

「すばらしい新世界」

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国際通りのすぐ裏にこんな世界が    (亀甲墓)

オルダス・ハクスリーは今まで読んだことがなかったのですが、「すばらしい新世界」を勧められて読みました。

まったく予備知識なく冒険物語かしらと思って手に取ったら、条件反射的教育で管理される階級社会という、機械文明が行き着いた恐るべき世界の話でした。そういう世界をリアルに描いて構築してみせたという意味で、冒険物語とも言えるでしょう。

 

人間がその尊厳を奪われ、支配者に実存をコントロールされる話はジョージ・オーウエル著「1984」や映画「マトリックス」などがありますが、それよりずっと昔、1932年(昭和7年)に「すばらしい新世界」が発表されていたのですね。オーウエルやマトリックスのタネ本なのではないでしょうか。

読んでいると映像が浮かんできて、まるで映画を観るように読める作品です。

 

文明論的SF小説とか風刺小説とか言われていますが、テーマが凄すぎて単なる小説として済まされる内容ではありません。人間の無知、理想、生きる目的、意味、歴史とは、未来とは・・・哲学的なテーマを突き付けられます。

 

「人は歴史の教訓からあまり多くのことを学べない。この事実こそ、歴史の教える教訓のうちで一番大切なものなのである」という彼の名言があるそうです。

ハクスリーの描く近未来の社会がすでに現代に実現され、もはや新たな歴史となりつつあるのは、我々がほとんど過去から何も学べていない証拠ですね。

 

 「たいていの無知は克服できる無知である。我々が知らないのは、知ろうとしないからである」

「あなたが確実に改善していける宇宙の領域が一カ所だけある。それは他ならぬあなた自身だ」

この作品の結末は悲劇的ですが、第二次世界大戦後、彼は結末をもっと希望のもてるものへと修正意見を提示したそうです。東西の神秘思想を学び、彼自身が変化・改善されたのかもしれません。

 

すばらしい新世界 (講談社文庫)

すばらしい新世界 (講談社文庫)