神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

「はだしのゲン」時代が再来

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本島から瀬底島にかかる橋

今週のお題「今月の目標」

夏休みに瀬底島を訪れたところ、旅館のホールが漫画祭り状態でした。その中で見つけた一冊、中沢啓一の「はだしのゲン」。広島で被爆したゲンが戦中戦後の理不尽な境遇でも自分を見失わずに生きていくという伝説的な名作ですが、実際に読んだことはありませんでした。

第一巻から凄い暴力の嵐で、必死に生きる人間のストレートな表現に惹きつけられます。今からわずか80年くらい前の話ですが、天皇や政治家の戦争責任を声高に問うゲンの父親が無実の罪を着せられ、警察で拷問を受けたり、「非国民」の息子として学校や近所で虐められるゲン兄弟姉妹。

子どもでも大人でも、権力に従わない者は殴る蹴るは当たり前だったんですね。まあ、ちょっと前まで教師による暴力は日常茶飯事でしたし、今でも陰湿な虐待は学校でも家庭でも会社でも相当ありますから、日本人は本質的に変わっていないと思った方がよさようです。

 

戦争を題材にしたきれいめアニメは「この世界の片隅に」などがありますが、「はだしのゲン」に比べると心身に迫るリアリティが全然違います。「はだしのゲン」は自ら被爆者である中沢氏の強烈な原体験が貫通しており、戦争を起こした権力者だけでなく、それを担いだ市井の人間への怒り、憎しみ、哀しみがこれでもかと細部にまで溢れているのです。これを描かねば中沢氏の原体験は成仏できなかったでしょう。

戦禍の悲惨は個人的体験が多くの人によって語り継がれてきましたが、元をただせば一体誰が、何が原因でこんな目にあっているのだ?とゲンは苦しみの中で執拗に問い、答えを出し、我々に投げつける、いや託しているのです。新聞やテレビのキャスターがしたり顔で「問い続けましょう」とか言って曖昧に収めるのを見るたびに頭にきます。

 

「非国民」といえば、ヨーロッパではワクチンパスポートなるものが導入され、日本にも輸入され、非接種者が非国民扱いされそうな雰囲気です。非接種者には罰を与えろ(虐待しろ)という国民が4割もいるそうですから、「はだしのゲン」の再来ではないでしょうか。「非国民」は「国民」に日常的にどういう扱いを受けるか、この漫画を読むとよくわかります。

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はだしのゲン」そのものが非国民扱いされ、少年ジャンプでの連載が途中で打ち切られました。松江市では「誤った歴史観を植え付けかねない」として、学校図書館から「はだしのゲン」を撤去するよう市民から陳情があり、教育委員会も応じたとか。まるでYouTubeなどSNSが「誤った情報が広がりかねない」と反ワクチン動画を言語道断に切り捨て、削除する動きとまったく同じです。

我々の社会はそもそもこういう非論理的で低級な支配者や精神構造のうえに危なっかしく立っているのだということを臨場感をもって学ぶ意味で、今月こそ「はだしのゲン」を読むことをお勧めします。読みたいときにはもはや発禁処分になっているかもしれませんから。