神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

本物のアナキスト、伊藤野枝

f:id:ryukyufun:20220226231610j:plain

        野草アワユキセンダンはサラダに使うとおしゃれ


栗原康著「村に火をつけ白痴になれ~伊藤野枝伝~」を読み、野枝のことを初めてちゃんと知りました。そして、びっくりしました。

女性解放運動のために、大正時代に平塚らいてう青鞜社で活躍していたくらいしか知識としてなかったのですが、野枝はらいてうの先を行く筋金入りのアナキスト。女性解放をとっとと飛び超え、人類解放まで行くような、スケールも度胸も大きな人でした。

 

親が決めた結婚を蹴って上京し、女学校時代の教師、辻潤と同棲。子どもを二人産んだ後、大杉栄と恋愛し、さらに五人出産。子連れ出勤したり、周囲に頼ることも、度重なる借金も、人に何て思われるかも臆することなく、育て上げました。

凄いなーと思います。こんなふうに誰もが素直に「助けて、お願い」って声をあげることができたら、行政に頼らずとも、自殺する人は減るんじゃないでしょうか。

 

なりふり構わず、世間を気にせず、自分の信念に従って自由にやりたいことをやる野枝。それがアナキストなのだと思います。アナキズムは「無政府主義」と訳されますが、本来の意味は「無支配主義」。つまり、誰も何も支配しないし、されないこと。

野枝は社会の定説だの常識だのに支配されることはありませんでした。もちろん、支配することもありませんでした。アナキストの定義をあれこれ考えて「枠」を作ろうとしていた大杉栄より、もっとプリミティブで自由な、生粋の、真正のアナキストだったんじゃないでしょうか。

結婚もある意味、相手をコントロールする契約です。特に所得が不安定な女性にとっては、生きていくうえで売淫と変わらぬ奴隷制度。だから、彼女は子どもを産んでも、結婚はしませんでした。ほんと、清々しい人です。

 

1923年9月の関東大震災のどさくさに紛れて野枝は大杉栄、甥っ子の橘宗一とともに、甘粕正彦率いる憲兵隊に拘束され、三人とも虐殺されました。野枝28歳。

アナキストほど無害で徹底した平和主義者はいないのに。人を支配下に置きたい戦争主義者からすると、真のアナキズムが社会に広がるのが怖いのです。人々が真に平和を手に入れてしまうからです。