神の島 琉球RYUKYU

豊かで不思議な沖縄の「今」をお伝えします the journal about rich and mysterious Okinawa today

マーク・トウェイン「不思議な少年」

         ミケコの息子、シノギも青年になりました


マーク・トウェインといえば「ハックルベリー・フィン」や「トム・ソーヤーの冒険」などの作品が有名です。子ども向けの冒険物語だと思って、特に興味もなかったのですが、たまたま彼の死後に出版された「不思議な少年」「人間とは何か」を読み、人間の根源を考察する目の確かさにぶっ飛んでしまいました。

訳者の中野好夫は「人間とは何か」という対話型評論に表れたトウェインのペシミスティックな人間観をそのまま物語化したのが「不思議な少年」であるとあとがきで述べています。が、トウェインは決して人生を嘆いてはいないし、ペシミストでもない。そのように簡単に類型化して終わるような話ではないのです。

 

不思議な少年」はオーストリアの田舎に住む三人の少年の前に現れた快活で利発な美少年、その名もサタン。

「・・・神もなければ、宇宙もない。人類もなければ、この地上の生活もない。天国もない。地獄もない。みんな夢ーーそれも奇怪きわまる馬鹿げた夢ばかりなんだ。存在するのはただ君ひとりだけ。しかも、その君というのが、ただ一片の思惟、そしてこれまた根なし草のようなはかない思惟、空しい永遠の中をただひとり永劫にさまよい歩く流浪の思惟にすぎないんだよ」

このサタンの言葉はペシミスティックというより、空を吹き抜ける風のように清々しい。トウェインて真正東洋思想の作家だったんだ、と驚きの発見でした。

 

また、この作品が軽視され、殆ど闇に葬られているのも驚きです。バチカンを敵に回すような内容ですから当然でしょうか。

まあ、世間では凄い作品、凄い人物ほど無視されるものですから、葬られたものに注目していけば真の宝に出会う確率が高いのでしょう。ある意味、わかりやすい世の中になりました。