わたしも妊娠中
チベット映画「羊飼いと風船」を観ました。
神秘の地チベット。その大草原で羊飼いをする貧しい一家の物語です。
信仰篤い素朴で穏やかな生活の中にも近代化の波は押し寄せ、バイクが馬に代わったり、中国の一人っ子政策で子だくさんの家庭は罰金刑が課されるなどします。
羊は生まれれば喜ばれるのに、チベット人の妻は子を妊娠しても喜べない・・・。
妻の妊娠している子は死んだ父の生まれ変わり、という高僧の預言を信じている夫。
しかし、いまや宗教的生活も形骸化しているようで、生活苦を案じる妻は高僧の言葉も転生も疑います。
恋愛トラブルで尼僧になった妹に、妻が「私も尼僧になりたかった。そうすればこんなに苦しまなくてすんだのに」と吐露するシーンがあります。すべてを投げ捨てて寺に逃げ込んだら、どんなにラクでしょうか。しかし、尼僧になったはずの妹も、昔の恋人への想いが清算できていないようです。
駆け込み寺なんか無い。今いる場所がおまえにとっての寺なのだ。修行せよ、ということなのかもしれません。
ペマ・ツェテン監督は中国の政策に切り込むでもなく(検閲があるからか)、少々不完全燃焼気味ではありますが、牧歌的な映像でチベットなるものをひととき堪能できる作品です。